古民家改修平面の決定要因解説シリーズ第四段、風の通り道について。
2020/02/21
心地よい風が抜ける古民家
いろいろな方向から吹いてくる風。動かない建物にとって、動く風をコントロールすることは非常に困難ですが、風が通り抜ける空間は気持ちの良いものです。省エネの観点でも風とうまく付き合いたいものです。どうしたら心地よい風が抜ける空間を作れるのか、ちょっと考えてみたいと思います。
夏の古民家に入った事がある人は想像しやすいと思いますが、夏の古民家はひんやりとしていて、クーラーが無くても過ごしやすいですね。
何故そんなにひんやりしていて過ごしやすいのでしょう?色々な理由がありますが、私は理由の一つとして、古民家は風が良く抜けるからだと考えています。
とは言え風が抜けるかどうかは、建物形状ではなく、立地環境のせいじゃ無いの?なんて声も聞こえてきそうですね。また、クーラーじゃなくて扇風機がいっぱい付いてるから!なんてユニークな回答もあるかもしれませんが、古民家の方が風が抜けやすい理由として、気圧差と壁の配置にあります。
ちょっと話が逸れますが、そもそも風と言うものは、ある空間の空気の圧力差を無くすために自然に発生するものです。圧力差なんて言われてもちょっと難しいかも知れませんが、天気予報なんかで「高気圧」とか「低気圧」なんてワードが良く出てきます。これがまさに圧力差で、高気圧から低気圧に向かって風は発生します。
でもって、その差が大きいほど風が強くなります。台風が来ると中心気圧が話題になりますよね。中心気圧が低ければ低いほど周りの気圧との差が大きくなって風が強くなる為に、台風の時に中心気圧が話題になるわけです。つまり気圧差が大きければ大きいほど、強い風が吹くわけです。(地球規模で見ると、偏西風とか気圧差だけでは無い風もありますが。)
さて話を建物に戻します。何故古民家の方が風があるのかと言う話題でしたね。要するに古民家の方が気圧差があると言う事になります。どう言うことかと言うと、古民家と言えば「広くて平屋」ですね。この「広さ」が重要で、広いお陰で気圧差が生まれやすくなっているのです。イメージにするとこんな感じ。
そしてもう一つ、これは皆さん想像しやすいと思いますが、壁が少なく風の通り道がある事も重要ですね。
と言うわけで、結果なるべく長い距離で風の通り道を作る事が、夏に涼しい風が抜ける家になると言うわけです。
さて我が家の平面を見ると、左側に壁があるので、風の抜け道を矢印で示すと、大きくこの3方が我が家の今の風の道となっています。
夏に涼しい風が抜ける家にするためには、簡単に言ってしまえば、この風の道を塞がなければ良いわけです。
例えばですが下図のように、壁を外周近くに入れるとどうなるでしょう?
一気に風の道は2方消滅してしまいます。こうなっては上下方向に風のある日は良いですが、左右に風がある日は室内の風はほとんど期待できません。
そこで外周の壁をやめて、壁を建物の真ん中に入れてみます。するとどうでしょう。矢印はほとんど邪魔されません。
と言うわけで壁を入れるなら、「極力内側にまとめて入れる」と言うのがポイントになりそうですね。
と言うわけで、古民家改修平面の決定要因解説シリーズ第四段、風の通り道についてはここまで。次回は景色編です。