とやまらいふ

富山にUターンした82年生まれ男子の富山の魅力発信と古民家改修ブログ

解体の秋!その3

解体の秋シリーズ第3弾です。

秋?もう冬だろ?って声が聞こえて来そうですが、実施したのが秋なのでお許しを〜

2019/10/27

敷居の設置方法 
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日本の民家は釘を使っていない!

なんてよく言われますが、本当なのでしょうか?

本当だとして、実際どうやっているんだ?

なんて思ったことはないですか?

今日はそんな古民家の技術を紹介します。

第3弾とは言え今回も床です。

じゃあなんでまた記事にしたのか?

それは匠の技に感動したからです。

第2弾では運良く?改修された床を解体してしまったので、第3弾では改修がされてない床を壊します。

とは言え床についてはほとんど同じなので今回のターゲットは敷居について。

敷居は説明不要ですかね?

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引戸の下側のレール状の溝が彫ってある材が敷居です。馴染みのある部材ですが、こいつが曲がったりすると、ふすまが外れたり動かなかったりで、精度や頑丈さが求められます。なのでこの状態で叩いても蹴ってもビクともしません。そのくせ釘などは一切見当たらないので、外観では固定方法が全く分からないという代物です。

力技で壊せば固定方法もわかるだろうと、力任せにバールでグリグリやってみます。

全く動かん…

困った…

押してダメなら引いてみな、と昔から言いますし、北風より太陽です。バールを置いて部材を観察してみる事にします。

まず両側には当然ながら柱があります。

隙間なくピッタリくっついてます。

それから難易度が高いのですが、敷居の真ん中くらいの下に大引を貫通して何やら怪しげな部材が出てます。

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うーん…

とりあえずわかったのは柱のある両端と、怪しげな部材のある真ん中以外は他の材料に触れていないって事です。

裏を返せばこの3点で固定されてるという事。

じゃあこの3点固定を2点固定にしちゃえば良いじゃないか!

と言うわけで、真ん中ちょい左を豪快に切る事にします。ノコギリでゴリゴリ行きます!

切断されるとともに、一点固定になった左側がゴロンと外れました!

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おおう!

今までの頑丈さが嘘のように簡単に外れました。外れてしまえばこっちのもので、柱際の納まりもよーく観察できます。

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こんな感じ。

柱下の凸部と敷居の凹部がガッチリとはまっていたわけです。と言うわけで残りの一方も外していきますが、こっちは敷居が無くなった方にスライドさせると簡単に外れます。

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ちなみにこちら側は柱の方が凹になっていて、敷居が凸です。反対側と逆になってます。この辺りを見ると工事の知恵と職人の技のすごさが垣間見えますよね。

ちなみに真ん中を固定していた所はこんな感じです。あとで解説しますが、こいつは引独鈷(ひきどっこ)って言います。

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さてここまで読んで、敷居の設置手順、固定方法が分かった人は古民家マニアか、大工さんくらいでは無いでしょうか?

と言うわけで図解しますね。

登場人物は以下の5人

・柱(A)

・柱(B)

・敷居

・引独鈷

・大引

まずは柱の加工から。
柱(A)も(B)も「T」の形に彫りますが、(B)の方は「T」の上の横棒を柱から飛び出させます。

f:id:tomtom_com:20191203233921j:plain次に敷居の加工。
レールの溝を彫ったら敷居の両端を加工します。柱(A)側に来る方は凸状に「T」の字を作ります。一方、柱(B)側ですが、こちらは「T」の字を彫って凹状にします。

 

f:id:tomtom_com:20191203235135j:plain敷居の加工はもう一つ必要です。
レール状の彫りの裏側に引独鈷をはめるための彫りを入れます。

 

f:id:tomtom_com:20191203235800j:plain次は引独鈷の加工。
まずは板を台形に加工します。その台形の上部は敷居を止めるための加工、下の方は穴を開けておきます。

最後は大引の加工。引独鈷を差し込む穴を開けます。まあこの穴はただの穴なので図は省略します。

登場人物の加工が終わったので、組み立てていきますが、まずは位置関係から。

2本の柱の下部に大引があります。こんな感じです。

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まずは敷居の裏側に引独鈷を固定します。穴に入れて横にスライドさせると抜けなくなります。

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次に柱(B)の「T」の縦棒に「ダボ」(という名前のはず…)を入れます。画像の赤いやつで、ただの木片です。

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ここまで来たら柱の間に敷居を入れますが、敷居の凸型の加工をした側を柱(A)に差し込みます。逆だと全く固定されないので、流石に間違わないですが…

大引の穴に引独鈷を入れるのも忘れてはいけません。引独鈷は左右にスライドするので、穴が多少ズレててもOKです!

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さてこの段階で多分下図のようになるはずです。はまってねーじゃん!って言わないでくださいね。こうなってないとむしろダメなんです。この時点でぴったりになっていると、使っているうちに敷居の真ん中が下がってしまう可能性があるのです。

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というわけで次のステップに行きます。

次は水平器を敷居の上に置いて、水平になるように引独鈷の上をひたすら叩きます!

水平になる少し手前で引独鈷の穴に木で作ったクサビ(下図黄緑の部材)を打ち込みながら敷居を水平にします。ここまで来ると、強い力でたたかない限り敷居は下がりませんし、逆に敷居が上側に反ろうとしてもクサビのおかげで反ることもできす、結果敷居が固定されることになります。

最後に柱(B)と敷居の「T」の横棒に打ち込み栓と言う木片(下図赤色の部材)を差し込めばガッチガチに完全に固定された敷居の完成です。

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とても長い記事になってしまいましたが、釘を使わずに、敷居を留める匠の素晴らしい技。その一部がお伝えできていれば幸いです。

最後にこれは我が家の事例です。全ての古民家の敷居が同じとは限らない事だけ断っておきたいと思います。

ではまた次回!